
灯り 零れ日/KOBORE-BIは、主に山口県産の希少な大径木のマツの丸太のさらに希少部位を使い、薄さ2、3mmで削り出した灯りの作品です。そのマツには大きく2種類「アカマツ」「クロマツ」があります。灯りの作品はこの2種類のマツを使い制作しています。

マツの名は天から地上におりることを“待つ”という言い伝えがあるように、昔から神聖なものとされてきました。厳しい環境でも育ち、一年中常緑の葉を付けている強さがあることからも、おめでたい木としてさまざまなシンボルにもなっています。
例えば、縁起のいい植物の代表格「松竹梅」の一つであり、またお正月に飾られるのは門松などです。マツは神様が宿る木とされ、年神様を迎えるために玄関先に飾られてきました。
能舞台の背景に描かれるのもマツです。能はもともと神様に捧げる舞として神社の舞台などで演じられていましたが、その神社にご神木としてしばしばマツが植えられていたことから、それが能舞台の背景にモチーフとして取り入れられています。


最大の特徴は、マツ脂(やに)が取れるように、樹脂を豊富に含んでいるということです。
特によく肥えた(樹脂が多い)マツの赤みと呼ばれる良い部分の表情の美しいものは、建築材として柱ではなく化粧材として、家の目立つところに使われます。
また、マツ脂が防腐の役目を果たすため、土木用材として地盤を補強するための杭としても利用され、地中に埋められ数百年も建物を支えている事例もあります。近くでは、2012年に生まれ変わった東京駅・丸の内駅舎の復興工事が行われたときに、駅舎地下から「松杭」が1万本以上でてきました。100年近く、そのほとんどが腐ったり割れたりせずに、しっかりとその機能を果たしていたのだそうです。巨大な東京駅を関東大震災をも乗り越え、土の中から守り続けてきた偉大な功労者達だと建築関係者などの間で話題になりました。

マツ脂という樹脂が特に多いマツ、またはその部分のことを肥松(コエマツ)と言います。灯り 零れ日は、主に肥松の部分をうまく活かしながら制作しています。樹脂が多ければ多い程その部分は透けやすくなり、灯りとしての凄みもその分増します。
また数千年〜数億年の樹脂が化石化してできている琥珀は、昔から洋の東西を問わず宝飾品として珍重されてきました。琥珀の透明度と灯り 零れ日のマツ脂からくる透け感はとても近いものがあります。


作品が100年の時を越えるその時にも、琥珀のような美しさのままでいる素材性をマツはもっています。灯り 零れ日はそのルーツや可能性をふまえた上で生み出される、マツの素材の素晴らしさを伝える一つの表現です。
マツはもちろんのこと、“木”という自然が人に与えてくれるぬくもりをどう表現するのか。
素材について考え、その価値や意味を感じつつ完成させる一つひとつの作品は、何にも変えることができない幸せと喜びを与えてくれます。